●会社法ワンポイントノート:社債(その1:全体的なお話)
※2013.05.02 追記: 帳簿記載まわりの記述は、語弊が生じるようだったのでごっそり削除いたしました。 内容が古かったみたいです。
 募集株式の発行のノートの次は、当然「新株予約権の発行だろう。常識的に考えて(AA略」と、思っていたのですが、新株予約権のノートを途中まで書いていて、実は社債のお話を先に持ってきた方がすっきりするんじゃないかという気になってきましたので、順番を入れ替えて社債を先にやっちまう事にいたします。(笑)

1:「社債」とは? 「社債」とは、会社がする借金のことです。国がする借金なら「国債」、都道府県の「県」がする借金なら「県債」、市町村の「市」がする借金なら「市債」です。これとまあ同じような表現をします。
 株式会社の場合、会社が事業を拡張するような局面で新たに資金を調達したいというような場合、
○ 募集株式を発行して出資を募る
 という方法を取ることができました。この場合、「出資」してもらったお金は借金では無いので「いつまでに返す」という約束をする必要はありませんでした。ただし、「株主」として会社に様々な権利を行使出来るようになるので、会社の経営に口出しをしてくる可能性も否定はできません。
 その一方で、
○ お金を借りる
 という方法を取ることもできます。この場合は「借りたお金」ですから、約束をした日までには必ず返済をしなければなりません。(そして多くの場合は利息が付いていることでしょう) 株式会社なら、出資を募れば「返す必要の無いお金」を手に入れる事ができるのに、あえて「お金を借りる」という選択をすることも可能です。その必要性って何なんでしょうか?
必要性その1:会社の経営に口出しして欲しくない必要性その2:募集株式を発行しても、引き受けてくれる人がいない
 というようなあたりの理由から、株式を発行したくない・したくてもできないことがあると思います。 このような場合に、会社がする借金「社債」についても会社法の上に事細かに規定がおかれています。このノートではそれらについて記述していきたいと思います。
 ところで、社債のお話をするとなると、簿記的な知識も少しはあった方が良いという人もいますので、ちらっとだけ触れておきたいと思います。
 社債の発行方法には、「平価発行(へいかはっこう)」と「割引発行(わりびきはっこう)」と「打歩発行(うちぶはっこう)」という3つのスタイルが存在しますが、通常ほとんどの場合は「割引発行」で発行するのが一般的と言われています。この3つ、何が違うのか?というと、
○平価発行 100円の債券を「100円で発行」すること
○割引発行 100円の債券を「97円で発行」すること
○打歩発行 100円の債券を「101円で発行」すること
 いずれも金額はあくまでも「例」ということで。 普通の一般庶民のお金の貸し借り感覚としては、100円のお金を借りたら、100円を返すというはずです。社債の場合、このようなケースのことを「平価発行」といいます。 ところが、多くの場合では、97円のお金を借りたら100円を返す…というような社債の発行方法が一般的と言われています。これが「割引発行」といい、『利息の前払い』という側面を持っています。 滅多に無い(そして簿記の試験でも滅多に出ないらしい)打歩発行は、101円のお金を借りたら100円で返す…という、お金を貸す側としては全くメリットが感じられない気がしますが、そういう社債の発行方法もなきにしもあらず…ということになっています。
 なお、平価発行だろうと割引発行だろうと打歩発行だろうと、約定がある場合には別途「利息の支払い」が発生することがあるという点は言うまでもありません。
 この辺のお話について、帳簿上どうやって処理するのか?という点については「日商簿記2級」あたりが守備範囲になりますので、興味がある人はそちらをあたってみてください。

2:社債を発行するために必要な手続き 実は、基本的には「募集株式の発行」とよく似た手順を踏んで社債を発行することになります。ということは、「募集株式の発行」をよく理解していればすでに社債の発行に関しては半分以上は理解できていると言っても差し支えないのではないかとも思います。 とはいえ、株式と社債は違う物ですから、当然に「違う点」もあるわけです。「似ているけど違う」という部分は、これまた当然に「狙い撃ちポイント」として出題されてくる可能性が出てくるので、そのあたりを綺麗にまとめて理解できるかどうか?が重要なポイントになってくると思います。
手順1:募集社債に関する事項の決定↓手順2:募集社債の申込み↓手順3:募集社債の割り当て↓手順4:払い込み
 と、これだけ見たら、募集株式の発行と何も違うところがありませんが、細かい部分では結構違いが存在しています。
 まず、「募集社債に関する事項の決定」については、株主総会の出る幕がありません。公開会社でも、そうでない会社でも、
○(株式会社の場合で、取締役会設置会社の場合) →取締役会の決議で決定
○(株式会社の場合で、取締役会の無い会社の場合) →取締役の過半数の一致で決定
 ということになっています。また、まだ登場していませんが、株式会社「以外」の会社(合名会社、合資会社、合同会社、特例有限会社)も社債については発行をすることができます。特に持ち分会社(合名、合資、合同会社)には取締役なんていませんし、株主なんて人もいないので、会社の出資者兼経営者である「社員」がこれを決定することになります。
 申込みや割り当ては募集株式の発行とだいたい同じです。2個目の「狙い撃ちポイント」になりうるのが「払い込み」です。ここは募集株式の発行と比較出題される可能性がある重大なポイントになります。

3:募集株式の発行と募集社債の発行とで、注意すべき違い 募集株式の発行をしっかり勉強した人はもう理解していると思いますが…
募集株式を引き受けようとする人から会社に向かって「相殺」を主張できない○会社の方から、募集株式の引受人に向かって「相殺」の主張は可能
 というポイント、覚えていますか? これに対して、社債の場合は
募集社債を引き受けようとする人から会社に向かって「相殺」を主張できる○会社の方から、募集社債の引受人に向かって「相殺」の主張も可能
 という点が出題ポイントとしては非常に狙い撃ちされやすいようです。
 また、募集株式の発行のノートでは触れていませんでしたが、株式を引き受ける人は出資を履行するに当たっては、「その全部を履行」しなければなりません。つまり、「分割払い」は認められないのですが、社債については「分割履行」もOKだったりします。

 それから、これも重要な違いですが、募集株式を引き受けた人は、『株主』として会社の経営に口出しをしたり、配当金をもらったりする権利を有していました。これに対して、社債を引き受けた人は『債権者』という地位にとどまりますので、【基本的には】会社の経営に口出しをしたり、配当金をもらったりするようなことはできません。
 【基本的には】←ここ重要です。
 実は、「株主総会のような物」が社債を引き受けた人にも存在しています。それは、
 社債権者集会(しゃさいけんしゃしゅうかい)
 と言う物があります。 ただしこれは、株主総会のように定期的に開かれる物ではありません。また、普段の会社の経営についてとやかく口出しをする機能は持っていません。通常、「社債権者集会」が開かれるのは、「会社がヤバい時」がほとんどです。 「会社がヤバい」とはどういう時かというと…
 『発行した社債の償還ができない(かも)!
 というケースです。「社債の償還ができない」というのは、要するに
 『借りたカネが返せない(かも)!
 ということを意味します。 このような事態に陥った場合(あるいは、陥りそうだとなった場合)に、社債権者が集まって、「どうしようか…」という相談をするのが、この「社債権者集会」なのです。 会社が順調な場合は、こうした集会は普通、開かれません。(例外がありますが…) 順調にお金を返してくれるなら、債権者としては何も文句は言えないのですね。

4:「社債管理者」という人 実は、株式の場合も『株主名簿管理人』という、株主名簿を管理する人(そのまんまですね!)を『置くことがある』のですが、社債の場合は原則的には「社債管理者」を必ず置くことになっています。 ただし、例外的に「置かない」という場合も有りうるということになっています。
 どんな場合に社債管理者を置く/置かないのか?という点、そして社債管理者は何ができる?何をしなければならない?という点は当然に出題されるかもしれないという辺り、警戒しておく必要があるかと思います。
 …とはいえ、社債自体がそんなに頻出問題か?と聞かれると、結構微妙な気はしますが…。